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ナローボートという、英国流の初夏の楽しみ
英国の夏は"至福"である。 日本では、英国=天気が悪いとお考えの方も多いだろう。 しかし、それは季節による。 冬は雨が多く、暗い時間が長いが、夏は早朝から夜10時まで明るく、カラッとした素晴らしい天候の日が多い。 つまり、英国を本当に楽しむには、夏がベストの期間なのだ。 その夏に大自然を満喫する英国ならではの楽しみ方は、ナローボートだ。 ナローボートとは、産業革命の時代に工業製品などを運搬するために運河のサイズに合わせて作られた細長い船のことである。現在は英国水路でクルーズ・ツアーとして利用されたり、家賃が高騰したロンドンで、部屋の代わりに住居として使われたりと、多種多様な活用がされている。 今回は、そんなナローボートのツアーをご紹介し、初夏の英国を楽しむ方法を伝授しよう。

▶ナローボートと、3500kmの内陸水路ネットワーク
数百年前、産業革命と共に物の運搬手段として張り巡らされた3500kmもの内陸水路。 ナローボートは、その時代に生まれた。 最短幅7フィート = 約2.1mのとても狭い運河で荷物輸送を行うため、背が低く細長い造りをしたボートは産業革命時代に運搬の重要な役割を果たしたが、20世紀初頭のディーゼル機関および蒸気機関による鉄道の発展により、衰退。 戦後、貨物輸送用のナローボートは姿を消したと言われている。
ところが、このナローボート。 Canal & River Trust というチャリティによれば、2014年には30,000以上ものナローボートが英国にあるという。 なぜか? それは一度廃れた運搬の用途ではなく、都市部の家賃高騰による住居としての活用や、英国の美しいカントリーサイドを水路を使って鑑賞する観光としての活用が進んだからだ。
引用: https://canalrivertrust.org.uk/
▶エイボン川をゆく! ブラウンあつこ氏によるナローボートツアー

ブラウンあつこ氏
著者 土橋は、英国で唯一、予約から実際のクルーズまで日本語でサポートできるナローボートのスペシャリスト、ブラウンあつこ氏にツアーを依頼した。
Narrowboat Guide: https://www.facebook.com/narrowboatguide.co.uk/
あつこ氏は夫のアンディ ブラウン氏と共にナローボートのツアーを企画・運営している。 クルーズ期間は4月から10月。 冬の期間は、オフシーズンとしてお休みとのこと。 やはり、英国の観光は夏が最高である。 あつこ氏によれば、オススメは 「1〜2週間貸し切って、ゆっくりとなにもない時間を楽しむこと。」だそうだ。
今回の旅では、エイボン川をクルーズした。
あつこ氏は船内で教えてくれた。 ナローボートの醍醐味は「何も考えなくていいことよ」と。
私達は、4時間のエイボン川のクルーズを楽しんだ。 次回は長期でゆっくりと貸し切りクルーズをしてみたいものだ。 ツアー時の動画を下記掲載する。雰囲気が伝わるはずだ。
▶引き継がれるナローボートと水路
今回のナローボートによるエイボン川クルーズでも、英国アンティークとの共通点を再認識した。
「過去はいつも新しく、本物の未来はいつも懐かしい。」
産業革命時代に、運送の用途で発展した水路とナローボートは時代と共に衰退した。しかし、今は観光や住居の用途で再度復活している。 ナローボートという物もまた、時代に翻弄されながら人によって引き継がれていたのである。 変化する人々の用途と変わらない物=ナローボート。 この100年以上続くボートと人との切っても切れない関係もまた、アンティークに通ずるのではないだろうか。