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シルバースミス(銀職人)の伝統と未来

英国の上流階級社会の食卓と切っても切り離せないのが銀食器だ。 ローマ帝国の衰退と共に姿を消した銀食器は、15世紀のルネサンス期に再びフランスやイタリアの貴族階級の人々の食卓に並ぶようになった。そして、銀食器をつくる銀職人たちは宗教政策などの理由で、17世紀後半にイギリスへ渡ることになり、ロココ様式の美しい銀食器を作るようになった。 いまでもアンティークの食器として人気が高い銀食器だが、英国ではどのようにして作られ、受け継がれているのだろうか? その現場を知るため、英国のコッツウォルズ地方のはずれ、チッピング・カムデン Chipping Campdenを訪ねた。


▶チッピング・カムデンとシルバースミス

2019年3月26日、著者土橋は英国のコッツウォルズにある小さな街、チッピング・カムデン Chipping Campdenを訪れていた。 その中心地にある、銀食器の現場を訪ねることが目的だ。


訪れたのは、ハート・ゴールド・アンド・シルバースミス Hart Gold and Silversmithsという工場だ。

WEBサイト: https://www.hartsilversmiths.co.uk/


1888年に創業し、1902年からこの地で銀食器工房を脈々と営んでいる。アンティークシルバーの修繕 Refurbishment から、 新しい銀食器の製作 Creation まで当時の技術を用いて行っているという。


入場料は無料であるが、この銀食器の制作現場はまさに職人の仕事場にふさわしい金属とパティナ(古い艶)の匂いと雰囲気に満ちていた。 寡黙な職人は、仕事をしつつ、ぽつぽつとだが丁寧に銀食器について説明してくれる。


1人の職人は、こう言った。「技術の継承が、新しいものを引き継ぐ底力だ」。 彼の感性は、生まれたときから見続け、触り続けてきた感触により、暗黙知の教育を自然と受けてきたのだろう。



▶シルバースミスとアンティークに共通する本質とは?

シルバースミスから見出した共通点。


それは、「過去はいつも新しく、本物の未来はいつも懐かしい。」ということだ。


シルバーの技術を引き継ぎ、古いものを修繕するだけなく、現代に活きるデザインの銀食器の製作もする。 つまり歴史を背負いながら、新しい銀食器に進化しているのだ。 それゆえ、このシルバースミス職人の手で作られる銀食器は、どこか懐かしい感じがするのである。脈々と続くシルバースミス職人の熟練技術と、その手によって作られ、引き継がれる銀食器。 まさに、アンティークの本質そのものだ。 結局、物だけでは引き継ぐことはできない。 素晴らしい技術を持った人に修繕され、磨き上げられながら、次の所有者へ引き継がれ、より高いレベルのアンティークとなってゆく。 この上質なサイクルを、これからもウォッチしてゆこう。



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